1999年度 地球物理学概論

海洋資源学科 木下正高(現JAMSTEC)担当


このページは、1999年度秋セメスターに開講された「地球物理学概論」の補助教材として、木下が作成したものです。結局未完成でしたが、ここに掲載しておきます。


トピックス

教科書:上田誠也著「地球・海と大陸のダイナミズム」(NHK出版) 870円


目次
第0章 イントロダクション
 
第1章 地球・大気・海洋の形成過程
 
第2章 大陸移動説からプレートテクトニクスへ
過去の南北極が移動した?それとも大陸が移動した?
第3章 海底地球物理学的観測の概要
地形・重力・地磁気・熱流量・音波探査・地震探査・孔内計測・リモートセンシング
第4章 海洋底拡大説
マントル対流/地磁気縞模様/地球磁場の逆転/Vein Matthews理論
第5章 プレートテクトニクス理論
トランスフォーム断層/海溝/海嶺/プレート/3重会合点
第6章 海嶺とプレートの実体
熱水活動/プレート成長モデル/熱構造
第7章 ホットスポット・プルームテクトニクス
海山列/プレートの絶対運動/プレート運動の原動力
第8章 沈み込み帯としての日本列島の構造と成因
比較沈み込み学/深発地震面/火山フロント/背弧海盆/付加体
第9章 気圏・水圏地球物理学
海洋の大循環/コリオリ力/海洋の垂直構造
大気圏の垂直構造/地球の物質・エネルギーバランス
第10章 身近な気圏・水圏の科学(11章と統合しました)
温室効果・火山爆発と冷夏など
温暖化・酸性雨などの環境問題はなぜ起こるか

 


第0章 イントロダクション

地球物理学とは何か
「物理的手法」で「地球」のことを調べる
地球物理学で何を知りたいか
地球の内部構造
地球はどのように進化してきたか
地球物理学の具体的手法を知る
力学、熱力学、電磁気学、弾性論、流体力学、統計力学
地震、重力、電磁場、熱
地球物理学の学問的手法
 

 

 

 

 

 


第1章 地球・大気・海洋の形成過程

文献

1-1. 太陽の誕生
分子雲(水素50個/cm3)  ちなみに地球大気は 2.5*1019/cm3
ここにやや密度の高い「コア」ができ、だんだん密度が高くなる。
1000万年で急速に収縮が進む
3000万年で太陽の誕生(全質量の99%)
1-2. 惑星の誕生
太陽ができた残りの分子雲(ガス+塵)が円盤状に 1%の質量
微惑星の形成(綿アメから固まる 直径10km)
微惑星の衝突・合体
月程度の大きさで大気を持つ
地球の大きさになるまでに1億年かかる
 

(どうして地球は丸いのか?) 丸くないとどんな不都合があるか?
比高10km程度にはでこぼこあり その程度ならOK(微惑星の大きさ!)
微惑星の段階ではぶつかるほうも大きいので、でこぼこが残るが、
大きくなると、微惑星の大きさは地球に比べて十分小さくなる

マグマオーシャンのために溶けて丸くなる

1-3. 地球の形成
 

地球の現在の半径をRとすると、

0.1-0.3R

鉄とケイ酸塩の混合物(レイヤーなし)

0.2R〜

衝突脱ガス(CO2, H2O, N2)

0.3-0.4R

大気圏の形成(水素・ヘリウム+衝突脱ガス)

0.4-0.5R

温室効果・重力エネルギーの解放で
表面が溶ける(マグマオーシャン)
鉄がオーシャンの底に沈む

0.6-0.7R

鉄によるコアの形成
地表温度は1700度C(岩石の融点1200度C)
大気中の水分はマグマと溶解平衡を保つ(feedback)

0.9R

最初の雨
急激に地表が冷える
マグマオーシャンの消滅

1.0R

大気、海、地殻、マントル、コア

1-4. 大気の形成 大気組成の進化
炭素循環による地球環境の安定性(後で議論)
CO2の減少 地表温度の低下、太陽光度の増大を相殺
O2の増大 生物の誕生による
 
1-5. 地球の進化

46億年前

原始地球:海、海洋地殻のみが存在

43億年前

プルームテクトニクス

40億年前

プレートテクトニクスの始まり
大陸が存在
大陸周辺での海洋地殻の沈み込みにより花崗岩マグマが
大陸に付加して大陸が成長

25億年前

成長がゆっくりになる
固体の内核の形成

19億年前

超大陸ローレンシア形成
以下約4億年毎に超大陸の形成(Wilson cycle)
2層対流から全マントル対流への変換

現在

最後の超大陸パンゲアの分裂が進行中
大西洋が拡大、太平洋が縮む

2億年後

新たな超大陸がアジアを中心に
オーストラリアが日本にぶつかる(ハワイも?)
太平洋がなくなり、アメリカが近づく

演習問題
0.6Rの頃の原始地球を考える。その頃は地表の温度は1700度、地表からの放熱量は300W/m2であった。もし仮に、そのままの放熱量で地球が冷えていると、一体何年で地球は再び冷たくなってしまうだろうか。R=6400kmとする。
(ヒント)0.6Rの頃の地球の持つ総熱量Qは、r=0.6Rとして、
Q=4*3.14159*r3/3*d*c*T
d=5000 kg/m3, c= 1000 , T=1700
今t秒で冷えるとすると、
Q=300*4*3.14159*r2*t
4*3.14159*R3/3*d*c*T==300*4*3.14159*r2*t
t=0.6R*d*c*T/900 ~ 1Ma !!

 


第2章 大陸移動説からプレートテクトニクスへ

文献

2-1. 大陸移動説の登場と衰退
気象学者Alfred Wegener (1880-1930)による「大陸と海洋の起源」(1915)
[証拠]
大西洋の両海岸での海岸線の一致(2枚のOHPで実験する)
氷河の分布と氷の移動方向の一致(石炭紀360Ma - 二畳紀248Ma)
  • 分布の範囲が広すぎる
  • 南半球にのみ分布
  • 氷河の移動中心がアフリカに来るようだ
古気候・古生物(陸橋)
  • 砂漠、石炭、岩塩分布
  • シダ類の化石分布が、上記の氷河分布と同じ
  • *古生物屋は、両方の大陸に共通の生物がいたことは「常識」であった。これが地球科学者には知られていなかった。
[仮説]
3億年前に超大陸パンゲアの存在
その後分裂して現在に至る
  • (デュトワの仮説) 南北両大陸ローラシア・ゴンドワナランド
  • その間にテチス海
  • (アルガン) これが閉じてアルプス/ヒマラヤ造山運動
[反論]
原動力の適当な説明がなかった
地球物理学者(地震学者Jeffreys)からの「数学的な」反論
というわけで、1940年代には下火になった。
教訓
ちゃんとして見えることが正しいとは限らない
いい加減に見えることでも、直感的に正しいことかも知れない
 
2-2. 古地磁気学による大陸移動説の復活
2-2-1. 地球磁場とは
地球は大きな磁石
双極子磁場 + 非双極子磁場

2-2-2. 極移動(Polar Wandering)
地球の自転軸が移動していることが、「古気候学」により示された
  •  
  • 億年のオーダーl
  • 過去の気候帯を化石などから推定した結果,最大で緯度50度くらいまで下がったことがあるようだ
  • このことと「大陸移動」との関連は??
「古地磁気学」の登場(ブラケット、ランカン)1950-
  • 時代の分かった岩石の残留磁化を測定
  • その岩石が作られた時の磁場の方向を求める
  • その時代にその場所からみた北極の位置を求める
  • 時代と共に北極の位置が移動しているように見える
「見かけの極移動」Apparent Polar Wander = APW
  • 自転軸の移動
  • 大陸の移動による見かけの極移動
  • この二つを区別することが必要である
ランカーンのグループ:ヨーロッパと北アメリカ大陸で古地磁気極を決めた
  • 古くなるにつれ、pole positionが南極に移動する
  • 2つのAPWが、平行(扇状)にずれている

 

  • それぞれのパスは、真の極移動を表わし、ずれが大陸移動によるものとした
  • 両大陸をくっつけてやると、両方の曲線がぴったり一致する
どうも大陸移動はありそうだが、証拠としては弱い!



演習問題

 


第3章 海底地球物理学的観測の概要

参考文献

 「海底物理」 東海大学出版会(絶版)

 「海洋調査フロンティア」海洋調査技術学会(希望者は木下まで;4000円)

 「地球観測ハンドブック」友田好文編 

3-1. 海底観測の項目

停船観測:海底に機器を下ろす;精度あるが非効率

装置名

測定項目

目的

熱流量計(ヒートフロー)

温度勾配+熱伝導率

地殻の熱構造、熱水循環の様式

柱状採泥器(ピストンコアラー)

柱状試料採取

層序学、年代学、古地磁気学

航走観測:船を走らせながら測定;効率いいが分解能低い

装置名

測定項目

目的

PDR

音響測深

海底地形を知る

SBP

3.5kHz音波探査

海底表層の堆積構造を知る

"SEABEAM"

海底地形

海底地形を2次元的に知る

エアガン-ストリーマ

反射法地震探査

堆積物(浅部)の速度構造

エアガン-OBS

屈折法地震探査

モホ面までの地殻速度構造

プロトン磁力計

全磁力

地磁気の縞模様;地下磁気基盤構造

三成分磁力計

磁場ベクトル

地磁気の縞模様;地下磁気基盤構造

船上重力計

重力加速度

地下密度構造

ドレッジ

岩石試料採取

岩石の採取(火山岩など)

海底設置型:長期観測

装置名

測定項目

目的

海底地震計

自然・人工地震

地震活動・堆積構造・モホの深さ

海底電位磁力計

電場・磁場

地下電気伝導度構造

長期熱流量測定装置

地殻熱流量

熱流量の時間変動・熱拡散率の推定

深海曳航型:船を走らせながら測定;海底付近の詳細な構造

装置名

測定項目

目的

IZANAGI(日本)

散乱強度

底質

TOBI(イギリス)

散乱強度・地磁気他

底質・磁場

TAMU2(アメリカ)

海底地形・散乱強度

詳細地形・底質

PASISAR(フランス)

海底地形・散乱強度・反射法地震探査

詳細地形・底質・堆積構造

Gloria(アメリカ)

散乱強度

底質

直接観測:潜水船・ROVによる観測 細かいスケールでの観察・測定

潜水船・ROV名

所有国

最大深度

(有人)

しんかい2000

日本

2000

しんかい6500

日本

6500

Alvin

アメリカ

4000

Pices V

アメリカ

SEACLIFF

アメリカ

Nautile

フランス

6000

Mir

ロシア

(無人)ROV

ドルフィン3K

日本

3000

かいこう

日本

10000

ROPOS

カナダ

Argo-Jason

アメリカ

 


3-2. 調査項目の詳細

PDRによる地形調査
海中は音しか伝わらない。音速は陸よりも速く、1500m/sである。
陸上の地形は、衛星によるリモセンにより得られるが、これは衛星から発射されたレーザー光の反射波の到達時間を測定することによる。同時にその周波数毎の散乱強度が地上の構造物により異なることを利用して、植生・温度などの特徴を捉えることができる。
同様のことを海洋では音を用いて行う。高い周波数(12kHzあるいはそれ以上)では海底の地形のみが分かる。3.5kHz、あるいはもっと低い周波数では海底よりも下にエネルギーがしみこむので、堆積構造を求めることができる。
測深の精度は10m以下である。
マルチビームによる海底地形の2次元マッピング
音響測深という意味では上と同じだが、進行方向に対して横に広がるビームの反射から、船の進行方向に対し、水深の2倍程度の幅で海底地形のマッピングが行える。この幅だけずらしてサーベイを行えば、海底地形の「完全マップ」ができることになる。当然のことながら、これは最近のコンピュータの発達のより可能になった技術である。精度は5mよりよい。
3.5kHz音波探査
3.5kHzの音を船から出して、その反射を観測する。12kHzよりも周波数が低い分、海底よりも下(30m程度まで)まで「浸透」して表層の堆積構造を明らかにすることができる。無論水深が分かる。手軽な割には利用価値が高い。
反射法地震探査(エアガン - ストリーマ)
上記音波探査の規模を大きくしたもの。音源は、船の後ろから曳航したエアガンである。エアガンから、圧搾空気を一気に噴出させ、その音エネルギーが海底下の構造境界にあたって反射する、その音をストリーマと呼ぶ直列のマイク(絵)で採録する。エアガンはより大きなエネルギーを出すので、上記寄りも深いところまでの構造(1-2km;音響基盤)が分かる。圧搾空気を作るためのコンプレッサーが必要であり、またストリーマを船の後ろから展開する手間もかかる。石油探査では、エアガンを多連とし、ストリーマも120チャンネルとするなど、より精密な調査を行っている。
屈折法地震探査(エアガン - OBS)
音源としては上と同じエアガン、またはさらに大きなエネルギーを得るために火薬を用いる。一方海底下から帰ってくる音波は、海底に置かれた地震計(OBS)で行う。音を海底で受けるので、より小さい音、つまりより深くから帰ってきた音が拾える。実際には、堆積物からの反射だけでなく、モホ面からの屈折波を捉えることもできるので、こう呼ばれる。
地殻熱流量調査
地球内部から表面を通じて放出される熱量は、地下の構造や活動度によて異なる。そこで、海底表面でこれを観測し、地下の熱構造を推定して構造や活動度を求める。
熱流量=「垂直方向の温度勾配」*「熱伝導率」 である。
温度勾配は、海底に長さ数mの槍(温度計が6-8個マウントしてある)を船上から突き刺して測定する。ささるかどうかは従って、堆積構造による。
熱伝導率は、付近で得られたコア試料について船上で測定するか、最近では温度プローブで直接測定できるものも出てきた。
1点の値を得るのに数時間かかるので非能率だが、海底に直接温度計をさすので、精度は高い。地球物理学的観測では数少ない直接観測量である。
磁力探査(プロトン磁力計、3成分磁力計)
磁力センサーは、その場所場所での磁場の強さを測定する。その場所の磁場の強さとは、地球磁場+局所的な磁気異常として表される。つまりこの和を測定していることになる。地球磁場は、標準的なものが式で表されているので、これを差し引くことにより、局所的磁気異常が求められることになる。
地下に海山があると、周囲の堆積物に比べて火山岩は多くの磁性鉱物を含むから、それが作る磁場は周囲よりも強い。従ってその上を船で通過すれば磁気異常として観測されることになる。これに地形情報を合わせることによって、地下の磁気基盤構造を計算・推定することができる。
プロトン磁力計は、船から曳航して、その場所の磁場の絶対値のみを測定する。今では航海での基本観測量として、多くのデータが得られてる。
3成分磁力計は、船に据え付けた状態で測定する。従って揺れの補正や船体磁化の補正を行う必要があり、プロトン磁力計よりも精度は悪い。しかし一本の測線だけで地下の磁化の方向を推定できるなどのメリットがあり、最近ではよく使われるようになってきた。
重力探査
重力センサーは、その場所場所での重力加速度の大きさを測定する。その場所の重力加速度の大きさとは、地球全体の質量要素との万有引力の積分と、遠心力により決まるものである。質量要素のうち、地球全体の規模のものはジオイドとして定義されている。これと実際の測定値との差は、測点付近の局所的な質量不均質を反映していると考えられる。
船上での測定では、ジオイド面(=海面=等ポテンシャル面)で測定を行っているので、得られた値がそのままフリーエア異常である、と考えてよい。
地下に海山があると、周囲の堆積物に比べて火山岩は重いから、その上を船で通過すれば正の重力異常として観測されることになる。これに地形情報を合わせることによって、地下の密度構造を計算・推定することができる。
船の一番揺れないところにセンサーが置かれる。船の揺れが0.5g (~500 Gal) にも達する中で、1mGalの違いを測定するのである。これは0.001/500〜10-5 の精度が必要とされる。実際には船の揺れはローパスフィルターにより除くことになる。
 
 


第4章 海洋底拡大説 Seafloor Spreading Theory

4-1. マントル対流説

 大陸移動の原動力として、マントルの対流を考えた(ホームズ、1931)

-> マントルの断面図を示す

 マントルというベルトコンベアに乗って、大陸が運ばれるというモデル

 あくまでもモデルであり、その証拠があるわけではなかった


マントル対流があることはもっともらしいか? を考える

マントル物質は岩石であるので、地震のような短い現象には固体(弾性体)として振る舞う。一方、例えば水飴のような物体を考えると、長時間の間には流動して形を保てない。マントルについても同様に、何億年というスケールでは自由に流動できる(粘性体)。

このように弾性体と粘性体としての性質を合わせ持ったものを粘弾性といい、これを扱う学問をレオロジーという。氷も粘弾性を持つ。

マントルについては、弾性・粘性の境となる時間は5000年である。対流の起こり安さを表す尺度にレーリー数があり、これがある値(臨界値)以上になると対流が起こる。

レーリー数 〜 密度 * 重力加速度*体積膨張率 * 温度差*マントル層厚N/ 粘性率 / 熱拡散率

マントルについては十分この条件をクリアしている。


Quiz

1. マントル物質が対流条件を満たしているかどうかは、レーリー数が臨界値以上であるかどうかでチェックできる。マントル物質についてレーリー数を計算し、これが臨界値以上であるかどうかを検討せよ。また身近な物質(水飴、お湯など)についても同様のチェックを行ってみよ。計算にあたっては次元をチェックすること。

ただし、臨界レーリー数は657.5とする。またマントル物質のパラメータは以下の通り:

パラメータ

単位

密度

4000

kg/m3

重力加速度

10

m/s

体積膨張率

3*10-5

K-1

マントル層厚

700

km

N

3

-

粘性率

1021

Pa s

熱拡散率

10-6

m2/s

温度差

1500

K

尚水の粘性率は10-3 Pa.s、グリセリンは2 Pa.s である。

 


マントルの流動性を示す、一つの証拠 = Post-Glacial Rebound

今から1万年前に氷河期が終わり、その後元々氷河のあった場所が隆起した現象。

その時定数(緩和時間)が5000年。

---> スカンジナビアのOHP

 


4-2. 海洋底拡大説

ヘス(1962)、ディーツ(1961)が提唱

---> 白黒OHP

海洋観測が行われた結果出てきた説である 説得力あり!

海底でマントルの熱い物質が海嶺で上昇して「海底」を新たに作り、これが海溝で「消費」されることにより、海底の面積は一定に保たれる。海底の生産場所と消費場所が、下部のマントル対流のパターンを表す、と考えられた(実は必ずしもそうでない)。

 

「証拠」

 


4-3. 地磁気の縞模様

ついに決定的データ現る!!

海底の磁場を測定することにより、そこでの年齢が決まってきた

 

残留磁化

残留磁化の意義:過去の磁場の化石である 過去を再現する手がかり

 

火山岩の場合:

マグマとして溶けている時は、温度は1200度以上

この時は中の磁性鉱物は熱的に活発で、外の地球磁場と無関係に運動

海底に噴出して冷える

約500度(ブロッキング温度)を境として、中の磁性鉱物はその時の地球磁場の方向を向いたまま固定

「熱残留磁化」 再加熱されない限り非常に安定

火山岩生成時の地球磁場を記憶している

 

堆積岩の場合:略

 ( 外から磁場をかけると、その試料(岩石)は磁化を帯びる。磁場を取り去っても、その磁化は0にはならない(ヒステリシス)。残った磁化を、飽和残留磁化という。)

 

 

地球磁場の反転

火山岩の熱残留磁化測定

磁北極の位置が現在とほぼ同じもの・逆のものに分かれる 中間なし

地球磁場がときどき(数十万年程度の周期で)逆転している!

 

ヴァイン=マシューズ理論 1963

海嶺を横断する方向の地磁気測定により、磁気異常が強弱交互に現れることが分かった。これを、上記「残留磁化」「地磁気逆転」を使って「海洋底拡大説」として説明したものである。

 

海嶺では岩石はいったん溶けて、磁化がリセットされる

海嶺で冷えて新たに海底地殻を作るとき、その時の地球磁場方向に熱残留磁化を持つ

できた海底は左右に拡がり、後から新しい海底が次々と形成される。

海底には、その時々の地球磁場を記録したものが残る。これは、地球磁場の逆転に対応して、交互に正と逆が現れる。これが地磁気縞模様である!

 


第5章 プレートテクトニクス理論

ヴァイン=マシューズ理論の出現で、海洋底は海嶺で生まれ、横に移動していることがはっきりした。地磁気縞模様によりその拡大速度も分かってきた。ここではプレートの概念を説明し、各要素の役割を解説する。

 

5-1. プレートテクトニクス とは

地球の表面を10枚程度の固い「板=球殻」に分け、これらの球殻が互いに動きあっている。それぞれの球殻を「プレート」と呼ぶ。

プレート内部では基本的に何も起こらない。

プレートの境界でいろいろな地質現象が起こる。

プレート境界3種

発散型=海嶺Ridge

プレートの生産場所

収束型=海溝Tranch

プレートの消費場所

横ずれ型=トランスフォーム断層

プレートどうしのすれ違い

*プレートという言葉ば単なる概念であり、ここでは「無限に固い球殻」という以外の意味はない。物理的・地学的にプレートが何を意味するか、は次回に解説する。

 


5-2. プレート・断層・地震のメカニズム

プレート境界は断層運動と連想して考えられる。

 

断層3種類

正断層:張力が働いている時にできるもの

ここで起こる地震は張力型である

逆断層:圧縮力が働いている時にできるもの

ここで起こる地震は張力型である

水平横ずれ断層:剪断応力が働いている時にできるもの

ここで起こる地震は横ずれ型(striku-skip)である

 

*横ずれ断層では、その端で物質の過不足が生じる。この結果、Pull-apart basinというものが形成されたりする。

 

プレート境界と断層の類似

プレート境界

断層の形態

応力場

発散型(海嶺)

正断層

張力

収束型(海溝)

逆断層

圧縮力

横ずれ型(TF断層)

横ずれ断層

剪断応力


5-3. トランスフォーム断層(Wilson、1965)

海洋底に存在する横ずれ断層(長さ1000kmにも及ぶ)の存在

OHPで見せる(海底地形)

端では物質の過不足がない!

地震活動もない

海嶺を中心として左右に伸びている

--> 普通の横ずれ断層ではない!


5-4. プレート運動を決める方法

 

0)プレート運動の定義

球面上の図形の移動は、球面上のある点(オイラー極)のまわりの回転として表される(オイラーの定理)。従って、大陸同士の相対運動は、このオイラー極と回転角を決めれば一意に決定されることになる。

 

1)TF断層の走向から(モーガン)

TF断層の走向は、プレートの運動方向そのものであるべきだ。(もしそうでなければ、TF断層のところで物質の過不足が生じる)。つまり、TFの方向は、そのプレートのオイラー極を北極とした等緯度線の小円の一部になっているはずだ。

従って、TFに直交する線を各TF毎に書けば、それらは一点で交わるべきだ。何故ならこの直交線はこのオイラー極を北極とする経線と考えられるからである。経線は北極で交わるのは自明。

これを発展させると、オイラー極を北極としたメルカトル図法の地図を書けば、TFは水平になるべきだ、と考えられる。   OHP

 

2)地磁気の縞模様を利用して拡大速度を求め、それからプレート運動を決める

 


5-5. 三重会合点

3つのプレートどうしが交わるところ

=3つのプレート境界が交わるところ

 

RRR

TTT

 

これらの幾何学的考察で、北米の地磁気模様から過去のプレート運動を再現することに成功した。特に海嶺の沈み込みの発見?は画期的であった。

 


5-6. プレートの絶対運動とホットスポット

TFなどから求められるのはあくまでもプレートの相対運動である

地球そのものに対するプレートの動き(といってもすべてのものは動いているのだが)をプレートの絶対運動と呼ぶ

実際にはマントル深部に対する運動、として考える

 

ホットスポット OHP

ハワイ諸島-天皇海山列は、太平洋プレートの上に転々と列をなしているように見える。さらに、現在活動しているのは一番東にあるハワイ島のキラウエアのみであり、西の島は活動していない。また西に行くと陸上の島としてでなく海山になってしまう。OHPでみると、キラウエアからの距離が長いほどその島の年代が古くなっている(それも直線的に)。またこのほかの太平洋上の海山列は互いに平行になってくの字をかいている。

これらは、マントル深部に固定した熱源からマグマが安定して供給されていて、その上をプレートが動くために火山列ができるのだ、と考えることができる(モーガン)。

このような、いわば地球に固定した火山をホットスポットと呼ぶ。HSの軌跡は、従ってプレートの絶対運動を示していると考えることができるだろう。

 

くの字になっているのは、太平洋プレートがその運動方向を変えたためだと考えられる。

またハワイ諸島の岩石の年代が距離と共に直線的に増加するのは、太平洋プレートの絶対運動がほぼ等速度運動をしていることを示している。

 
第6章 海嶺とプレートの実体

6-1. 地球の構造とプレートの実体

プレートテクトニクス理論では、プレートはとにかく無限に固い板(球殻)で、それ自体は内部変形しない、と考える。つまりその厚さとか、物理的イメージは考えなかった。

従って、実際の地球の物質とプレートを対応させる必要がある。

地球の構造(復習)