第9章 気圏・水圏地球物理学

*この章は、もともと水圏だけを扱う予定でしたが、授業の都合により、次にあった「気圏地球物理学」と統一しました。

9-1.地球の大局的な構造

地球 : 真空に浮かんだ球(物質的には閉じている、エネルギー的には開いている)

地球が球なのは、引力が等方的であるためである。 このため、基本的には核から大気圏まで徐々に軽くなるという球殻構造が構成されている。気圧は、地上では平均 1013 hPa=1気圧、これは水深10mでの圧力に相当し、空気の厚さ10km に相当する。

 

9-2.海水・大気の組成・性質

水の特殊性

海水の組成・性質

大気の組成・性質

 

9-3.海洋・大気の構造

海洋の構造

大気の構造

 

9-4.海洋と大気の大循環

海洋大循環

 

大気の大循環

原動力は?

力学

圧力

直方体の気塊を考える。この6つの境界面のそれぞれについて、それに垂直に働く力を考え、その力を、力の働いている面の面積で割ったものを、圧力と呼ぶ。より一般的には、単位面積を持つ任意の断面を考え、そこに働く力のことである。大気の場合にはこれを気圧と呼ぶ。

下記の直方体を考える。これが垂直方向には運動していないとする。上面に働く圧力をP上, 下面に働く圧力をp下とする。

上面に働く力=p上*dx*dy

下面に働く力=p下*dx*dy

気塊自体の重さ=密度R*g*dx*dy*dz

この3つの力しか働いていないので、向きを考えて力の釣り合いの式をたてると、

p上*dx*dy + R*g*dx*dy*dz = p下*dx*dy

すなわち、

p上 + R*g*dz = p下

よって、

dp=p下-p上=R*g*dz

いまRが一定とすると(これは非現実的だが)、この式を積分して、

p(z)=p(o)+R*g*z

となり、ある高さでの気圧が計算できることになる。実際にこれを利用して、気圧から高度を測定しているのである。地表付近では、1kmあたり約100hPaの気圧低下が起こる。

 

コリオリ力

コリオリ力は、地表を運動する物体(気塊でもよい)に働く力である。北半球では進行方向に対して右向きに、南半球では左向きに働く。むろんこれは地表にとどまっている(地球と一緒に運動している)人からみた力である。実はこれは遠心力と同じ見かけの力である 。

 赤道から北に向かってものを投げる。これは静止座標系からみると、自転による速度との合成だから、北東に投げたことになる。物体はそのまま北東に向かうが、自転による速度は北ほど小さいから、地球に対してみると物体は右(東)に向かっているように見えるのである。

コリオリ力の単位質量あたりの大きさFは、

F=2*w*sin(f)*v

ただし、

w: 地球の自転の角速度=0.7292*10-4 rad/s

f: 緯度(rad)

v: 速度(m/s)

である。重要なことは、コリオリ力は気塊の移動する速度に比例していることである。つまり動いていなければ働かないのである。

 

コリオリ力を直感的に理解するために、次の例を考える。

ラグビーの試合における横パス(以下、正確な言葉は知りません。ご勘弁):ラグビーの試合で、横一列に並んだ選手が、敵ゴールに向かって等しい速度で走りながら、右の選手から左の選手に向かって順番にボールをパスしている場合を考える。まず、地球のような球体ではなく、純粋な平面では以下のようになるだろう:

これに対して、地球の北半球でラグビーを行うと、次のようになる。監督は北極に立っている。

 

(クイズ) 北極から南に向かってものを投げるとどうなるか、考察せよ。

気圧傾度力

 水平方向の力今水平方向の向かい合う面AとBにのみ、圧力の差があるとする(A側が高気圧だとしよう)。それぞれの面での圧力をPA, pBとする。重力は関係ないので、この気塊にはAからBに向かって力が働くことになる。これが気圧傾度力である。その大きさは、

(pA - pB )*dx*dz

である。これがこの気塊全体に掛かる。質量は

R*dx*dy*dz

だから、単位質量あたりの力としては、

(pA - pB )*dx*dz / (R*dx*dy*dz)= (pA - pB )/R/dy

となる。

 

地衡流

高層の大気では、上記の二つの力のみが、気塊に働いていると考えてよい。流れの方向と地衡流 海流でも風でも、等圧線に「平行に」吹く。ものは高圧から低圧に流れるべきであるのに、これはどうしてか。これは、上記のコリオリ力によるものである。等圧線に垂直(下向き)に流れようとすると、右向きの力を受けて流れが曲がってしまう。どこまで曲がるかというと、圧力勾配による力(気圧傾度力)とコリオリ力つりあうまで曲がる。これは等圧線に平行に流れるときである(図示)。このような流れを地衡流という。

このことを利用して、気圧分布から風の方向、強さを推定することができる。

ただし地表では、空気と地面との摩擦のため、風はやや低圧側に向かって吹くことになる。

以下の状態で、Aに静止した気塊があるとする。

  1. 静止しているのでコリオリ力は働かず、気圧傾度力のみが働くので、その気塊は北に向かって動き出す。だんだん加速されるので、速度は速くなる。
  2. その速度に比例して、進行方向右向きのコリオリ力が働く。当然気塊は右にそれてゆく。相変わらず気圧傾度力は働いている。だんだん加速すると共に、ついにコリオリ力が気圧傾度力よりも大きくなる。
  3. 進行方向が東になったとき、気圧傾度力とコリオリ力は向きが完全に逆になり、コリオリ力は最大となる。このとき、正味の力は南向きに働くので、さらに右に曲がる。つまり今度は東南の方向に動く。
  4. 今度は気圧傾度力が逆に働くので、減速される。それに従い、コリオリ力も弱くなってゆく。
  5. ついにB点で静止する。

 

実際には、このような気塊の集団が移動しているわけであり、上記のAからBまでの平均ととると、北向きには速度がキャンセルしてしまうので、全体としては東向きの流れのみが残る。この状態を地衡流と呼ぶ。すなわち、等圧線と平行に流れるのである。このときの速度vは、

(pA - pB )/R/dy = 2*w*sin(f)*v

から計算できる。

 地表では、上記の力以外に、地面との摩擦が、進行方向と逆向きに働く。これらの3つの力の合力により、大気が流れる。実際には等圧線に斜めに風が吹くのである。

 

 

9-5.エネルギー・物質のバランス

地球を動かす主なエネルギー源:太陽 + 地熱

大きさは1000倍ほど異なるがそれぞれ果たす役割が異なる

人間はもっぱら太陽の世話になっている

太陽エネルギー

地熱

 

物質バランス

堆積物の流れ
陸源・生物起源など
水の流れ
河川・雨・海底
炭素循環
二酸化炭素は植物と海洋が吸収する
生物は炭素の固まり 二酸化炭素を吸収している
海底の堆積物に取り込まれているものも多い
 

エネルギーバランス

地球を加熱する原因

太陽(1000W/m2)、地熱(<0.1 W/m2)

地熱:火山活動、地殻熱流量

地球を冷却する原因

地表からの放熱 現在の気温は14度 これで吸収と放射がバランスしている

放熱を妨げるものがなければ、零下18度(月) 大気という毛布により、これが14度まで上昇している

大気の組成の変動が地球の温度をコントロールしている!

水:4-7Micro m の光(赤外線)を吸収

二酸化炭素:13-19Micro m の光(赤外線)を吸収

「吸収」とは、地球にとどまることだから、結局地球を熱することになる

7-13の窓を通って熱は逃げる

従ってこれらの大気が増減すると、それだけ温度が変化することになる

CO2が増えると吸収量が増えて、結局温度は上昇する

 

 


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